月別アーカイブ: 2015年6月

腸内環境3

そのような変遷の中、12年ほど前に抗加齢医学(アンチエイジング医学)の存在を知りました。老化は病気と捉えて抗老化を研究実践する医学です。それまでは、老化は病気でなく、自然と考えられていました。
老化にも生理的老化(正常老化)と病的老化(非正常老化)があり、抗加齢医学会では現在、病的老化を起こさないことで、バランスのとれた加齢が健康長寿の源と考えられています。
その抗加齢医学での腸内環境に対する考え方は少し違っていました。生きた乳酸菌を補給するのではなく(生きた乳酸菌の摂取では腸内環境が改善されにくい)、死んだ乳酸菌の大量摂取が有効であるとの新しい考え方です。
最初に聞いたときは疑問に思いました。死んだ菌を摂って、なぜ腸内環境が改善できるのか理解できなかったのです。
死菌の摂取が有効であるという理由は2つありました。この理由を理解することで、疑問は解けました。なるほどと納得できたのです。
1、死んだ菌のみが、小腸にあるパイル板という組織まで届いて刺激し、反応を起こす。それは異物排除反応で、この反応がデトックス機能や免疫などを活性化し、体を健全化させる力に発展する。
2、死んだ菌は乾燥状態で摂取することができるので、小さなカプセルで2兆個もの菌が摂取可能である。また、このくらいの数を摂取しないと、腸内環境改善の有効な刺激にならない。
この2つの条件を満たしているのが、プロバイオテクス(身体に良い作用をする微生物:腸内環境を良くする菌)として販売されているサプリメントです。
剤形は、カプセルが適していると言われています。乾燥した製品であることと、錠剤の場合は形を作るために成分の半分以上が必要になるので、有効成分が少なくなってしまうからです。
このような考え方で、まずは腸施術で「腸こり」を緩め、腸機能を改善することがファーストエイドと考えるようになりました。いくら良いものを摂取しても、腸機能が低下した状態では活用されにくいからです。
しかし、死菌による乳酸菌サプリメントの有効性も実感しています。サプリメントとして腸内環境改善を望むのであれば、死菌で1カプセル2兆個のものをセレクトすると良いと思います。
まとめて考えると、腸施術で腸の機能を正常化していくのと同時並行で、死菌の乳酸菌サプリメントと両方でアプローチすることが、最も有効であるということになります。
「首こり」に次いでこりのケアが大事なのは、「腸こり」です。いいかえると、「首こり」と「腸こり」は健康の維持増進、病気の回復に対して、諸悪の根源なのです。
首と腸、双方の凝りケアをすることは何よりも大事なことだと言えると思います。

腸内環境2

中心となるのは、小腸であると知ったのは、やはり臨床の現場です。実は内臓も「凝る」のですが、小腸も例外ではありません。むしろ凝りやすい臓器と言って良いでしょう。小腸が凝ることを発見したことは、とても大きなことでした。
お腹に手を当て腹診すると、腸の反射でお腹が固く、圧痛を感じる方が非常に多いのです。特におへその周囲は圧痛の多い、固くなっていることの多い場所です。この辺りは小腸の反射でこうなっているのだと臨床で知りました。
そして、凝った小腸は機能が低下していますから、消化吸収機能も弱まっています。そこへ、どれだけ良い栄養を摂取しても吸収が悪いので、活用されにくいのです。
だから、まず小腸の凝りを取ってあげることが先決で大前提だと知りました。小腸の施術法を開発したことで、小腸の凝りのコントロールができるようになり、小腸の機能を正常化することができるようになりました。
その頃、乳酸菌飲料などの摂取やヨーグルトの摂取では、腸内環境が改善されにくいことがわかってきたのです。しかし、それに変わる有効な手段も見出されていませんでした。
巷では腸内環境改善ブームの兆しがありましたが、有効な方法が確立されていなかったため、ブームに発展することはありませんでした。
つづく

 

腸内環境について1

私が腸内環境に注目し始めたのは、今から30年ほど前だと思います。自分の体調不良からサプリメントの摂取を経て、腸内環境に意識が向くという変遷です。
当時はまだ、サプリメントという言葉自体が世間的認知を受けておらず、健康食品と称されていた時代です。2015年2月にNHKスペシャルで放映され反響を呼んだ「腸内フローラ」という言葉も当然ながら、ない頃でした。
その当時に注目したのは、腸内環境を整えるために必要な栄養(食物繊維、オリゴ糖)と身体の強壮、強精作用のある栄養素を組み合わせたものでした。それを摂取してもらうことによって腸内環境の改善を図ろうと考えたのです。
結果はさほど芳しくありませんでした。摂取していただいた皆さんに改善の実感が持てていなかったことと、腸施術においての所見に変化が乏しかったからです。
そして、腸内環境改善のための工夫は腸施術に重点を置いていくようになりました。それから長期間の臨床経験を積む中で、腸への施術法が確立していきました。中には驚くほど即効性を発揮する例もありました。
このふたつの経験から、腸内環境改善のために栄養素を与えるよりも、腸が正常に動けるように戻していく(腸施術)が大事だと変化して行きました。
腸の長さは、小腸が7メートル、大腸が1.5メートルと言われています。表面積はそれぞれ、テニスコート1面分と半面分。お腹に収まっていますが、実はとても大きな巨大臓器です。
腸内細菌は、小腸と大腸に分布しています。その種類1000種、その数100兆個以上と言われています。便の内容の1/3以上は腸内細菌の死骸と言われてもいます。

続く